「インドネシア・フィリピンからの介護士受け入れに思うこと」 

2008・6・30  Y.T

 一昨年から、日本とインドネシア・フィリピンなどの政府間で経済連携協定(EPA)が締結され、両国での合意があれば、最初の2年間で介護福祉士候補600人、看護師候補400人を受け入れる準備がされています。看護師については、本国での実務経験が入国条件となっており、日本語を6ヶ月間学んだ後、病院で働きながら研修し、3年以内に日本の国家試験に合格すれば、仕事を続けることができます。一方、介護福祉士では、大学卒が入国の最低条件で、受け入れ先の施設で実習研修をしながら、4年間で日本の介護福祉士の国家試験に合格しなければません。
現在、フィリピンのマニラ市内には、100を越す日本語学校があるとのことで、日本で介護福祉士として働くために、6ヶ月で日本語3級(小学校3年生程度の読み書き能力)の力をつけることを目標に、多くの女性たちががんばっています。
しかしながら、難しい日本語での国家試験に外国人が合格することは、とてもハードルが高く、まして過酷な労働状況が問題になっている病院や施設で仕事をしながら、日々の生活をし、勉強を続けることができるのか、大いに疑問です。
結局のところ、日本では看護師や介護士不足の解消への期待から優秀な外国人労働者を受け入れ、研修生として安易に使おうとしているのではないか。3年または4年で、ハードな国家資格を取れば残って働いてもいいが、不合格になればさっさと帰国せよということです。あまりに外国人労働者の人権を無視した政府間の協定に、怒りを覚えます。
日本で介護保険制度が始まって9年目、介護施設で働く職員やケアマネージャー・介護ヘルパーなどの介護労働者は、労働条件の悪化や低賃金のため職場を離れ、介護の現場は深刻な人手不足になってきています。そのために、外国人の介護労働者を受け入れることは、日本の介護労働者の立場から言えば、日本人の労働条件をより悪くすることに繋がるのではないかとこれまで議論してきました。
しかし、かなりのキャリアを身につけたフィリピン女性が、日本語を必死で学び、家族に仕送りするために日本での仕事をしようと、一生懸命努力している姿を録画映像で見て、同じ女性として、彼女の人間としての幸せという面からもこの問題をとらえなければいけないとつくづく感じました。
ここしばらくの間でも、外国人労働者は日本にも増え、国際結婚の増加に伴い、二つの祖国を持つ子どもたちも増えています。「モザイク」が果たす役割や求められる期待も益々増えてくることでしょう。「モザイク」が、みんな同じ人間であることを基本に、グローバルな視野も忘れることなく、隣の困っている人に手をさしのべる存在であってほしいと思います。